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2026.08.03 コラム

衰えません、死ぬまでは──90秒からの、ささやかな反抗

『衰えません、死ぬまでは。』——書店でこのタイトルを見かけたとき、思わず足が止まりました。旅行エッセイストの宮田珠己(みやたたまき)さんが、還暦を過ぎてから筋トレに挑んでは挫ける日々を綴った一冊です。ジムを運営している私が言いたかったことを、先に、しかもずっと軽やかな言葉で言われてしまった——正直、そう思いました。

ところが読み進めるうちに、気持ちが変わりました。この本の書き手は、まったく模範的ではないのです。筋トレを決意しては愚痴をこぼし、毎朝の「バターしみしみパン」もやめられない。それが、私たちが毎日お店でお会いする方々と、あまりにも同じでした。そこで今日から、このタイトルをお借りして連載を始めます。脅さず、責めず、わかっている範囲でお話ししていきます。

まず、お借りしたタイトルについて

この本は、宮田珠己さんが幻冬舎plusで2023年から連載し、2026年7月に幻冬舎から単行本として刊行されたエッセイです。宮田さんは1964年生まれ、現在62歳。おもしろいのは、筋トレを始めた動機です。ダイエットでも肉体美でもなく、「運気を上げるため」。体力が落ちると気力も好奇心も落ちて、人生全体の運気が下がっている気がする——だから鍛える、というわけです。

この連載のタイトルは、その本へのオマージュです。同じ題名をそのまま名乗るのは失礼にあたりますので、「──90秒からの、ささやかな反抗」という副題を添えました。あの本を読んだジム側の人間が、科学の側から答え合わせをしてみる——そういう連載です。

「なだらかな下り坂だと思っていたら、崖だった」

本のなかに、忘れられない比喩があります。衰えというのは、なだらかな下り坂だと思っていた。ところが40代の半ばで、それが突然「崖」になった——という趣旨のくだりです。

私にも、思い当たることがあります。階段は、今でも問題なく上れます。ただ、駆け上がれなくなりました。上れるかどうかではなく、速さのほうが先に落ちていたのです。

この「崖」の感覚には、実は理由があります。

衰えの正体は、「量」ではなく「力」だった

筋肉の衰えというと、多くの方が「筋肉量が減ること」を思い浮かべます。体組成計の筋肉量の数字を気にしている方も多いでしょう。ところが研究が示しているのは、もっと先に落ちていくものがあるという事実です。

アメリカで70〜79歳の1,880人を3年間追跡した調査では、下肢の筋肉量は年に約1%のペースで減っていました。ところが膝を伸ばす筋力のほうは、年に2.6〜4.1%「量」の減り方の、およそ3倍の速さで「力」が失われていたのです。

さらに驚くべきことに、追跡期間中に筋肉量が増えた人でさえ、筋力の維持にはつながっていませんでした。

しかも、減り方には場所のクセがあります。日本人4,003人を対象にした調査では、20歳時と80歳時を比べたとき、下肢の筋肉量は男性で約31%、女性で約28%減り、しかも20歳代から減り始めていました。一方で体幹部は、中年期まで緩やかに増え続けます。全身の合計で見ればほぼ横ばい。その裏側で、太ももだけが静かに減っているのです。

体組成計の数字を眺めているだけでは、いちばん早く進んでいる変化を見落とすことになります。ある日ふいに「あれ?」と気づく——それが「崖」の正体です。

それでも、90歳の筋力は174%伸びました

気が滅入るお話が続いて申し訳ありません。ここからが、いちばんお伝えしたかったことです。

1990年、医学誌『JAMA』に載った研究があります。対象はボストンの高齢者施設に暮らす10名、平均年齢90歳(87〜96歳)。多くが変形性関節症や心疾患を抱え、8割に転倒歴がありました。その方々が、週3回・8週間、膝を伸ばす筋力トレーニングに取り組みました。

8週間後——
膝を伸ばす筋力は、平均174%増加。
太ももの筋肉の断面積は9.0%増加。歩行速度は48%改善し、2名は杖なしで歩けるようになりました。
訓練中の転倒はゼロ。そして筋力の伸びは、8週間の時点でもまだ頭打ちになっていませんでした。

4年後、同じ研究チームが平均87歳・100名で無作為化比較試験を行ったところ、運動をした群の筋力は+113%、しなかった群は+3%。そして栄養補助食品だけを摂った群には、効果が認められませんでした。厚生労働省のガイドにも、「筋肉は年齢に関係なく鍛えることができ」とはっきり書かれています。

だから私たちは、90秒に賭けています

「効かせるには長時間やらなければ」と思われるかもしれません。ところが16件の追跡調査を統合した分析では、週30〜60分の筋力強化活動が死亡リスクの低さと関連する一方で、週1時間を超えて増やしても、それ以上リスクが下がるという明確な証拠は得られませんでした。厚労省の『身体活動・運動ガイド2023』も週2〜3日を勧めたうえで、「筋トレの時間が長くなりすぎると逆効果となる可能性がある」と注意を促しています。

必要なのは長い時間ではなく、毎回きちんと出せる強度と、また来られる軽さです。QuickPlusGymの設計は、この2つを前提にしています。

  • 強度は、AIが決めます──AIマシン「Extrec(エクストレック)」が、あなたがいま発揮している力を0.1秒単位で感知し、「限界の少し先」の負荷をリアルタイムに与え続けます。重さを選ぶ必要も、回数を数える必要もありません。
  • 時間は、短く固定します──1種目90秒。3種目やっても運動している時間は約5分来店から終了まで約10分です。
  • また来やすくします──手ぶらでOK、着替え不要。イトーヨーカドー大森店でのお買い物のついでに立ち寄れます。しつこい勧誘もありません。

誤解のないように申し上げると、ラクだから筋肉がつく、という話ではありません。90秒のあいだ、少しきついと感じる瞬間は必ずあります。ただ、長く頑張る必要はない——それが、ここまで見てきた研究が教えてくれることです。

「衰えません、死ぬまでは」と、私はまだ言えない

正直に言えば、私はまだ、あの本のタイトルのようには言い切れません。調べれば調べるほど、下り坂そのものをなくすことはできないと分かります。

それでも、坂の角度は変えられる余地がある。90歳で筋力が174%伸びた人たちがいる。わかっていることを並べるだけで、意外なほど希望が残ります。

AIやロボットがどれほど進化しても、あなたの筋肉だけは、誰にも・何にも代わりに増やしてもらえません。だからこそ私たちは、AIの力を「筋肉を増やすお手伝い」に使うことにしました。AI時代の筋肉は、AIに増やしてもらう。

次回は、この「崖」をもう少し細かく見ていきます。なぜ、速く動く筋肉から先に失われていくのかというお話です。

まずは1回、マシンに座ってみるところから。イトーヨーカドー大森店3階のQuickPlusGymで、無料体験を受け付けています。手ぶらでOK、しつこい勧誘もありません。お電話(03-6410-8919)または予約フォームから、お気軽にどうぞ。

あわせて読みたい

※本記事のタイトルは、宮田珠己『衰えません、死ぬまでは。』(幻冬舎、2026年)へのオマージュです。同書の本文を引用したものではありません。
※参考:Goodpaster BH et al. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2006;61(10):1059-64./谷本芳美ほか. 日本老年医学会雑誌. 2010;47(1):52-57./Fiatarone MA et al. JAMA. 1990;263(22):3029-34./Fiatarone MA et al. N Engl J Med. 1994;330:1769-75./Momma H et al. Br J Sports Med. 2022;56(13):755-63./厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
※本記事は一般的な科学的知見を紹介するものであり、特定の疾病の予防・診断・治療を目的とするものではありません。効果には個人差があります。既往症のある方、通院中の方は事前に医師にご相談ください。

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