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2026.09.24 コラム

「前向きになりすぎない」ほうが、続く──サボった翌日の科学

連載「衰えません、死ぬまでは──90秒からの、ささやかな反抗」の第3回です。

この連載の元になった本には、とても好きな回があります。筋トレが続かない著者が、あるとき方針を変える。筋トレを趣味でも目標でもなく、「業務」と仮定することにしたのです。そしてその回のタイトルが、「筋トレを続けるためには、前向きになりすぎないこととする」。

読んだとき、思わず笑いました。そして少し考えて、これはかなり正しい、と思いました。前回の最後に「科学的にも筋が通っている」と予告したのは、この話です。

「21日で習慣になる」には、根拠がありませんでした

まず、よく聞く話から片づけておきます。「新しい習慣は21日で身につく」。本や雑誌で何度も見かける数字です。

ところがこの数字は、1960年に出版された、ある美容外科医の本に由来するとされています。手術後の患者さんが新しい顔に慣れるまで、少なくとも21日ほどかかる——という臨床の観察で、習慣づくりの実験から出てきた数字ではありません。それがいつのまにか「習慣は21日」に変わって広まりました。

21日を目標にして、3週間で身につかなかった自分を責めた方がいたら。それは、あなたのせいではありません。最初から、ものさしのほうがずれていたのです。

実際は66日。運動は、もっとかかります

では実際はどうなのか。2010年にロンドン大学のチームが、この問いを正面から調べています。参加者に「毎日、同じ場面で、ひとつの行動を続けてもらう」。そして毎日、その行動がどれくらい「考えずにできる」ようになったかを記録してもらいました。

結果、行動が自動化するまでにかかった日数は、中央値で66日。ただし個人差がとても大きく、18日の人もいれば、254日かかると推定された人もいました。さらに、水を飲む・果物を食べるといった行動より、運動のほうが時間がかかる傾向が見られたと報告されています。

習慣になるまでの日数。よく言われる21日説には根拠がなく、研究では真ん中の人で66日、早い人で18日、254日かかる人もいた。半数の人は39〜102日。
習慣は、3週間ではなく、
季節ひとつぶんくらいかけて、できていく。

長いと感じるでしょうか。私は逆に、少し気が楽になりました。1か月で変われなくても、それは普通のことだとわかったからです。

ちなみに「中央値」というのは、平均ではなく真ん中の人の値です。半分の人はもっと早く、半分の人はもっと時間がかかった。あなたがどちら側でも、それはただの個人差で、向き不向きの判定ではありません。

1日サボっても、ほとんど何も失われない

この研究には、もうひとつ大事な発見があります。

参加者たちは、当然ときどきサボります。研究チームは、この「抜けた日」を140回ぶん分析しました。1日抜けると、習慣はどれくらい崩れるのか。

答えは、ほとんど崩れないでした。翌日の「自動化の度合い」の下がり幅はごくわずかで、その後の伸び方も、休まずに続けた場合とほぼ変わらなかったと報告されています。

つまり、習慣づくりを壊すのは1日のサボりではありません。壊すのは、「1日サボってしまった、もうだめだ」とそのままやめてしまうことのほうです。

ここで、あの本のタイトルに戻ります。前向きになりすぎる人ほど、1日の失敗を大きく受け止めてしまう。「毎日やるぞ」と燃えた人ほど、1回の抜けで「連続記録」が途切れたことに落ち込み、そこで降りてしまう。少し冷めているくらいのほうが、翌日しれっと戻れるのです。

6万人の実験が見つけた、いちばん効いた工夫

「戻る」ことの大切さは、もっと大きな規模でも確かめられています。

2021年、科学誌『Nature』に、アメリカのフィットネスチェーンの会員約6万1千人を対象にした研究が発表されました。研究者たちは、ジムに通う回数を増やすための工夫を54種類用意し、どれが効くかを一斉に比べたのです。

いちばん効果が大きかったのは、意外なものでした。予定していた日に行けなかった人が、次に戻ってきたとき、ちょっとしたご褒美がもらえる——という仕組みです。この工夫で、週あたりの来館回数は約27%増えたと報告されています。

「毎日来た人を褒める」より、「休んだあとに戻ってきた人を報う」ほうが効いた。続ける力の正体は、休まないことではなく、戻ってくることだったわけです。

やる気を出すより、予定を決める

では、どうすれば戻りやすくなるのか。心理学でよく知られているのが、「もし〇〇したら、△△する」と、いつ・どこで・何をするかを先に決めておくやり方です。

「運動をがんばろう」ではなく、「火曜の買い物のあと、3階に寄る」。これだけで、目標を決めただけの場合より実行されやすくなることが、多くの研究をまとめた分析で示されています。やる気を出すより、予定を確定させるほうが強いということです。

お気づきでしょうか。これは、あの本の著者が思いついた「業務と仮定する」とほとんど同じ発想です。業務は、気分が乗らなくてもやる。乗らない日があっても、翌週はまた普通にやる。そこに、特別な前向きさは要りません。

逆に、前向きさだけを燃料にすると、燃料が切れた日に止まってしまいます。気分は天気のように変わるものです。天気に左右されない仕組みを先に置いておく——あの脱力した一文は、そういう知恵だったのだと思います。

燃えなくていい。決めておけばいい。火曜と金曜を予定にした2週間のカレンダー。2週目の火曜を休んでも、次の予定の金曜にしれっと戻る。抜けても、次の予定に戻ればいい。

だから、「戻りやすい」形にしています

ジムを経営している私が言うのも何ですが、運動が続かないいちばんの理由は、根性の不足ではないと思っています。スポーツ庁の令和7年度の調査でも、運動の頻度が減った・増やせない理由の1位は「仕事が忙しいから」(26.5%)、2位は「面倒くさいから」(22.8%)でした。忙しくて、面倒。とても正直な理由です。

だからQuickPlusGymは、「がんばる」前提ではなく、「戻ってきやすい」前提で形を決めています。

  • 1種目90秒──3種目やっても運動している時間は約5分、来店から終了まで約10分です。
  • 手ぶらでOK、着替え不要──準備のいらない場所なら、「今日は面倒」のハードルが少し下がります。
  • イトーヨーカドー大森店の3階──お買い物という、もともとある予定のなかに「寄る」を差し込めます。
  • 重さも回数も、考えなくていい──AIマシン「Extrec(エクストレック)」が、その日の力に合わせて負荷を決めます。久しぶりの日も、その日の自分から始められます。

先週来られなかった日があっても、今日来れば、それでいい。戻ってくるたびに、また一回ぶん積み上がる——それくらいの温度で付き合っていただければと思っています。

次回は、よくある誤解の話を書きます。「筋トレは、負荷を上げ続けないと維持もできない」。じつは、そうとも限らないのです。

何度か挫折してきた方へ。イトーヨーカドー大森店3階のQuickPlusGymで、無料体験を受け付けています。手ぶらでOK、しつこい勧誘もありません。お電話(03-6410-8919)または予約フォームから、お気軽にどうぞ。

あわせて読みたい

※本連載のタイトルは、宮田珠己『衰えません、死ぬまでは。』(幻冬舎、2026年)へのオマージュです。同書の本文を引用したものではありません。
※参考:Maltz M. Psycho-Cybernetics. 1960./Lally P et al. Eur J Soc Psychol. 2010;40(6):998-1009./Milkman KL et al. Nature. 2021;600:478-483./Gollwitzer PM & Sheeran P. Adv Exp Soc Psychol. 2006;38:69-119./スポーツ庁「令和7年度 スポーツの実施状況等に関する世論調査」
※本記事は一般的な科学的知見を紹介するものであり、特定の疾病の予防・診断・治療を目的とするものではありません。紹介した研究は海外の一般成人・フィットネス会員を対象としたもので、当ジムの利用効果を示すものではありません。効果には個人差があります。既往症のある方、通院中の方は事前に医師にご相談ください。

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