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2026.10.03 コラム

「下ろす」ときが、いちばん効く──筋トレの主役は「ブレーキの筋肉」

筋トレと聞くと、多くの方は重いものを「持ち上げる」場面を思い浮かべると思います。バーベルを押し上げる、ダンベルを巻き上げる。下ろすほうは、ただの「戻り」──そう思われがちです。

ところが運動生理学の研究では、むしろ逆の話がいくつも出てきています。筋トレの主役は「下ろす」ときかもしれないのです。

この記事は、当店で使っているAIマシン「Extrec(エクストレック)」の開発者であり、筋肉の研究者でもある比嘉一雄さんのミニ講座「年齢は戻せない、筋肉は戻せる」の内容をもとにまとめました(講座当日の様子はこちら)。

筋肉の力の出し方は、2種類あります

筋肉が力を出すとき、大きく分けて2つのやり方があります。

  • コンセントリック=縮みながら力を出す。持ち上げる、椅子から立つ、階段を上る。
  • エキセントリック=伸びながら力を出す。下ろす、椅子に座る、階段を下りる。

椅子にゆっくり座るところを想像してみてください。太ももの前の筋肉は、伸ばされながら体重を支えています。勢いよく落ちないように、ブレーキをかけているのです。ですからこの記事では、エキセントリックを「ブレーキの筋肉」と呼ぶことにします。

では質問です。階段を上るときと下りるとき、筋肉がブレーキをかけているのはどちらでしょう。──答えは下りるときです。荷物を下ろす、坂道を下る。暮らしのなかの「下ろす」動きは、どれもこのブレーキの仕事です。

椅子に「ドスン」と座ってしまう。下り坂がなんとなく怖い。それは、このブレーキが少し弱ってきたサインかもしれません。

「下ろす」ときの筋肉には、3つの特長があります

このブレーキの筋肉には、よく知られた特長が3つあります。

  1. 大きな力を出せる──持ち上げるときより、2〜4割ほど大きな力を出せるとされています。
  2. 息が上がりにくい──同じ階段でも、上りより下りのほうが体の負担(代謝)が小さいと報告されています。
  3. 年齢を重ねても残りやすい──下ろす力は、上げる力に比べて加齢で落ちにくいことが報告されています。

力は大きく出せるのに、体はきつくない。しかも年をとっても残っている。運動が久しぶりの方ほど、使わない手はない力だと言えます。

60歳以上の方で、「上る」と「下りる」を比べた研究

では、実際に「下ろす」だけで鍛えたらどうなるのか。2017年に、こんな研究が発表されています。

対象は60歳以上の女性30名。週2回、12週間、階段を使った運動をしてもらいます。ただし片方のグループは「上るだけ」(下りはエレベーター)、もう片方は「下りるだけ」(上りはエレベーター)です。

運動中の心拍は、上るグループが1分間に約114、下りるグループは約89。下りるほうがずっと楽です。ところが12週間後、筋力や体力、血糖の指標などは、下りるグループのほうが大きく改善していたと報告されています。

階段、効いたのはどっち? 60歳以上の女性30名・週2回×12週間。上るだけのグループは運動中の心拍が約114回/分で体力・筋力は改善。下りるだけのグループは心拍約89回/分で、筋力・体力・血糖の指標などがより大きく改善。楽なほうが、より効いた。
楽なほうが、より効いた。

「つらいほうが効く」と思い込んでいると、意外な結果です。「きつい・つらい」が苦手で運動から遠ざかっていた方にこそ、知っておいてほしい話です。

※ただし、階段の下りは転びやすい場面でもあります。試すときは必ず手すりを持ってください。

「下ろすだけ」なら、半分の回数で同じくらい育った

もうひとつ、2022年の研究です。今度は運動経験のない若い人を3つのグループに分け、腕のトレーニング(ダンベルカール)を週2回、5週間行いました。

  • 上げて下ろす(ふつうの筋トレ)
  • 上げるだけ(下ろすのは補助)
  • 下ろすだけ(上げるのは補助)

5週間後の筋肉の厚さは、ふつうの筋トレが+10.6%、下ろすだけが+9.7%でほぼ同じ。一方、上げるだけは+2.5%で、はっきりした増加は見られなかったと報告されています。

しかも回数が違います。ふつうの筋トレは1回のトレーニングで60回(上げ30回+下ろし30回)、下ろすだけは30回。半分の回数で、同じくらい育ったのです。論文では、上げる動作は筋肉の成長にあまり関わっていなかった可能性がある、と述べられています。

筋力の伸びも面白い結果でした。上げるだけのグループは上げる力しか伸びませんでしたが、下ろすだけのグループは止める力・上げる力・耐える力のすべてが伸びています。いわば、上げるだけは「特化型」、下ろすだけは「万能型」です。

60歳以上の脚と、若い人の腕。年代も部位も違う2つの研究で、どちらも「下ろす」が効いていたことになります。もちろん、それぞれ人数や期間の限られた研究で、すべての人に同じ結果が出るとは限りません。それでも、筋トレの「戻り」を軽く扱うのはもったいない、ということは言えそうです。

ところが、ふつうの重りでは「下ろす力」を使い切れない

ここで、ひとつ問題があります。重りは、上げても下ろしても同じ重さだということです。

下ろす力は上げる力より2〜4割大きいので、上げるときにちょうどいい重さは、下ろすときには軽すぎます。せっかくのブレーキの筋肉が、力を余らせたまま終わってしまう。研究の「下ろすだけ」グループが効いたのは、上げるところを手伝ってもらい、下ろすところにだけしっかり重さがかかっていたからです。

比嘉さんの講座では、「下ろす」のかけ方を3つの段階で紹介していました。

  • STEP 1 ゆっくり下ろす──3〜4秒かけて下ろす。自宅でもできる入口です。
  • STEP 2 両手で上げ、片手で下ろす──上げるときは楽に、下ろすときだけ重くする工夫です。
  • STEP 3 下ろすときだけ重くする──研究と同じ理想の形。ただし、補助してくれる人か機械が必要です。

今日からできる「下ろす」トレーニング

STEP 1を、ご自宅でひとつ。椅子にゆっくり座る、です。

  1. 椅子の前に、足を腰幅に開いて立つ
  2. 4つ数えながら、ゆっくり座る
  3. 立つときは、手を使ってもOK
  4. これを5回、まずは週1回から(慣れたら週2回へ)

立つときに手を使うのは、ズルではありません。「上げるのを手伝って、下ろすだけをやる」──研究の「下ろすだけ」を、自宅向けに小さくした形です。壁や手すりのそばで行い、痛みが出たらすぐにやめてください。持病のある方は、先に医師にご相談ください。

QuickPlusGymのマシンは、「下ろす」ときにも負荷をかけます

最後に、少しだけ当店の話をさせてください。

QuickPlusGymのAIマシン「Extrec(エクストレック)」には、重りがありません。AIが負荷を制御し、押す・引く局面だけでなく、戻す・下ろす局面にもそれぞれ負荷を設定します。上げるときと下ろすときで、別々の重さをかけられる──つまり、上でお話ししたSTEP 3の形を、補助者なしで行えるマシンです。

  • 1種目90秒──3種目やっても運動している時間は約5分。来店から終了まで約10分です。
  • 重さを自分で選ばなくていい──その日の力に合わせてマシンが負荷を決めます。重りが落ちてくる心配もありません。
  • 毎回の力が数字で残る──毎回の筋力が記録され、スマホで確認できます。

年齢は戻せません。でも、筋肉は戻せる。その近道は、意外にも「下ろす」ときにありました。

ご自身の「下ろす力」がどれくらい残っているか、一度測ってみませんか。イトーヨーカドー大森店3階のQuickPlusGymで、無料体験を受け付けています。手ぶらでOK、しつこい勧誘もありません。お電話(03-6410-8919)または予約フォームから、お気軽にどうぞ。

あわせて読みたい

※本記事は、比嘉一雄氏のミニ講座「年齢は戻せない、筋肉は戻せる」の内容をもとに、QuickPlusGymが再構成したものです。
※参考:Chen TC, et al. Med Sci Sports Exerc. 2017;49(8):1614-1622./Sato S, et al. Eur J Appl Physiol. 2022(doi:10.1007/s00421-022-05035-w)/Roig M, et al. Br J Sports Med. 2009;43(8):556-568./Roig M, et al. Exp Gerontol. 2010;45(6):400-409.
※本記事は一般的な科学的知見を紹介するものであり、特定の疾病の予防・診断・治療を目的とするものではありません。紹介した研究は当ジムの利用者を対象としたものではなく、当ジムの利用効果を示すものではありません。効果には個人差があります。既往症のある方、通院中の方は事前に医師にご相談ください。

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